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ワシントンからあなたへ(7)

「センス・オブ・ワンダー」映画の撮影を終えて

 谷脇多佳子

10月の秋の撮影を最後に、「センス・オブ・ワンダー」の映画のアメリカでの撮影はすべて終了しました。それなのに、またしばらくすればボストン空港のいつもの待ち合わせ場所で、上遠さんと映画の撮影班にお会いできるような気がしてなりません。

ウェンディとイアンと
上遠さん(別荘前で撮影)
初めてレイチェル・カーソンの別荘を訪れたのは、1998年の11月に「センス・オブ・ワンダー」映画化を検討するための視察にご一緒させていただいた時です。その後に、映画化が決定し下見が春に行なわれました。そして、冬、春、夏、秋とそれぞれの季節ごとの撮影があり、今回ですべてが無事終了したわけです。

コーディネーターとしてとても助かったのは、アメリカの地元の人たちが色々な形で救いの手をさしのべてくれたことです。出演者のウェンディさんとイアン君は勿論のこと、メイン州の映画協会や、ボストンやポートランドの機材屋さん、空撮のパイロットの人、メイン州オーデュボン協会の自然観察の先生、ロブスターの漁師の方など、本当に多くの人たちが「センス・オブ・ワンダー」の映画の内容を知って、積極的に協力してくれました。

虫のオーケストラを探して

ネーザンさん(昆虫採取)
ネーザン・アーウィンさんは、シャーリー・ブリッグスさんが事務局長をされていた時代にレイチェル・カーソン協会で昆虫学者として勤務されており、『Basic Guide to Pesticides』(レイチェル・カーソン協会編)の編集にも多大な貢献をされています。1993年のレイチェル・カーソン日本協会の第一回アメリカツアーに参加された皆さんはネーザンさんのことを覚えておられるかもしれません。現在は、スミソニアン自然史博物館の「Insect Zoo」にお勤めで、展示されている昆虫の管理から世界各地での昆虫採集など忙しい日々を過ごされています。

日本人にとって秋の風物に虫の音は欠かせないと思います。カーソンも秋の虫の音を楽しんでおり、『センス・オブ・ワンダー』の中で、懐中電灯をたよりに小さな音楽家をたずね歩く冒険について書いています。この虫たちのオーケストラを撮影するために、昆虫学者のネーザンさんに専門家として助けていただき、昆虫採集にも同行していただいたのです。あいにく撮影を始めてから二三日後に急に気温が下がって虫の音が静まってしまったのですが、やはり専門家だけあってバッタやキリギリスなど色々な虫を次々と面白いように捕まえてこられます。そんなネーザンさんでさえ、カーソンが「鈴振り妖精」と呼んでいる虫の姿を見つけることがなかなかできなかったのですが、ネーザンさんによると「カーソンでさえ実際に見たことがない虫とは一体どんな虫なのだろうと想像をたくましくすることこそが、センス・オブ・ワンダーなのではないでしょうか」ということです。自然史博物館での多忙なスケジュールにもかかわらず、そして父親のように慕っておられた叔父様が亡くなられた直後だったのにもかかわらず、「センス・オブ・ワンダー」の映画のためにはできるだけのことはしたい、と言って一生懸命手伝ってくださいました。

メイン州フィルムオフィス

映画はメイン州の主要産業のひとつです。レイチェル・カーソンも愛したメイン州の自然を考えれば当然のことかもしれません。アメリカのそれぞれの州には映画制作を補佐する役目を果たす政府機関としてのフィルムオフィスがあります。『センス・オブ・ワンダー』の映画撮影に際して、メイン州のフィルムオフィスのリア・ジラルディンさんには、映画の機材屋さんや空撮を行なう航空会社などを教えてもらったり、ロケ地の候補を推薦してもらったりといろいろとお世話になりました。電話だけでなく顔を合わせたいからとリアさんは言って、空撮の打ち合わせをしていた航空会社にわざわざ会いにきてくださったり、夜空を撮影している現場に立ち寄ってくださったりと、本当に心温まるサポートをしてくださいました。

メイン州フィルムオフィスで、リアさんが過去11年の間に補佐した映画の中には、トム・ハンクス主演の「フォレスト・ガンプ」や、ケビン・コースナーとポール・ニューマンが出演する「Message in a Bottle」、そしてスリラー小説の人気作家スティーブン・キングの「Thinner」など有名な映画が数多くあります。メイン州の地元の経済を潤すためには巨額な予算が組まれたこれらの有名な映画を歓迎するものの、リアさんが心から応援したいと思っているのは「センス・オブ・ワンダー」のような充実した内容の 自主制作映画なのだそです。そういった意味で、フィルムオフィスで働いている以外にも、リアさんは非営利団体のアートシアター(芸術実験映画劇場)に出資し、また自分でも芸術映画を制作するために「Shadow Distribution」という映画会社を経営しているということです。モントリオールやトロントの映画祭には質の高い芸術映画がデビューすることが多いので毎年見に行っているのだと説明されていました。

「禍を転じて福となす」

ロバートさん・カミールさん夫妻
のボートで(シープスコット湾)
救いの手をさしのべてくれたアメリカ人の人たちの中でも、最も印象に残っているのは別荘の近くにすむロバートさんとカミールさんです。冬の撮影を行なっていた2月に、別荘の近くの道路が凍っていたため、撮影班の四輪駆動車が滑って道端の茂みに突っ込んでしまったことがありました。困り果てていたときに、たまたま通りかかって助けてくれたのがロバートさんとカミールさん夫妻なのです。

それ以来、お二人がキリスト教関係のコンサルタントとして働いておられるホームオフィスのファックスを使わせてもらったり、書類のコピーをとってもらったり、郵便物を受け取ってもらったり、カミールさんお手製のジンジャークッキーや豆のスープをもらったりと、紙面には書き尽くせないほどいろいろとお世話になりました。本当に「禍を転じて福となす」というのはこの事だと思います。ロバートさんは、子供の頃アルバイトで牛乳配達をしていたことがあり、レイチェル・カーソンの別荘にも牛乳を届けたことがあるそうです。カミールさんが「さようなら」と言いながら上遠さんを抱きしめたあと、二人の目が真っ赤だったのがとても印象的でした。レイチェル・カーソンが引き合わせてくれたうれしい出会いだと心が和みました。

別荘の近くの森での撮影現場


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